ポイント3 無理に悩みを聞き出そうとしない
本人と家族にとって最もつらい時期
不登校が始まって間もないころ、――期間にして1~2か月のうちは、子ども本人の気持ちの落ち込みや混乱が激しく、親もまたこの時期の子どもをどう理解すればよいのか対応に苦しみます。
子どもが「学校のことを考えたくないのに、気になって仕方がない」という状態に対して、「このまま学校に行かなければ、この子の将来はどうにかなってしまうのではないだろうか」という親の不安から、どうしてもすぐに学校に行かせようとしてしまいがちです。いまこの瞬間の心の苦しみをわかって欲しいという子どもの思いと、子どもの将来を案じてたとえ辛くても学校に行かせなければならないという親の思いがすれ違うことで、お互いの気持ちが理解できず、いさかいが起こり、本人と家族にとって最も苦しい時期が続きます。
学校を休み始めてから、家庭の中で落ち着いて過ごすことができるようになるまでの期間を進行期と呼びますが、進行期の終わりは、本人と家族が「不登校になった」という事実を受け入れられたときに終わります。
本人も進行期には、「学校に行きたいのに、行けない」「昨日は行こうと思っていたけど、今日になったら行きたくなくなった」というような矛盾した感情に整理がつけられない状態にあるため、親としては、いまは気持ちが混乱して身動きが取れなくなってしまっているのだと理解して、この状態を受け入れることが先決です。
この矛盾し混乱した状態の時に、「とにかく余計なことは考えず学校に行きなさい!」と刺激すると、進行期は終わらず、さらに心理的安定度が崩れ、不登校が長期化する可能性が高くなります。
不登校を受け入れるというのは、あきらめることとは違います。現在の子どもの状態を受け入れることで、解決のためのスタートラインに立つのです。あるがままの状態が受け入れられれば、「一緒に乗り越えて行こうね」と子どもと同じ目線から応援することができるようになります。
不登校の理由は本人もよくわからない
子どもと同じ目線に立ち、一緒に問題解決を図って行こうとするのが不登校の解決のためのプロセスですが、不登校の原因探しに固執するのも良くありません。
親から「どうして行けないの?」「どうしたら行けるようになる?」と問い詰められると、子どもも自分の気持ちがはっきりとわからない、あるいは、言ってもわかってもらえないのではないか、言ってしまったらまた自分が傷つくような感じがするというような思いから、こう言えば親にもわかってもらえるのではないかと考えて、親が納得できそうな理由を言うことがあります。
しかし、「クラスメイトが嫌だ」「先生が怒る」というような子どもの発言を言葉の通り受け取って「学校に言ってあげようか?」「転校したら行けるようになる?」と親だけが結論を急いでも、子どもの気持ちがついて行かず解決につながらないことがあります。
親としては、よく理解できない子どもの状態に対して原因を早く特定して、ひとまず安心したいという気持ちがあるかもしれませんが、親の悩みの解決を優先しようとするのは良くありません。子どもが求めているのは、解決策やアドバイスではなく、自分でもよくわからない気持ちに理解を示してくれ、否定したり批判したりせずにまるごと受け止めてくれる存在なのです。
子どもがいつでも助けを求められる存在になる
目指したいかかわりは無理に悩みを聞き出すのではなく、子どもがいつでも助けを求められる存在になることです。
カウンセリングでも同じことなのですが、本人が話そうとするまでは信頼関係を築くことに専念し、話してくれるまで子どもを信じて待つということをします。大切なのは、話そうとするまでただ待っているのではなく、親子であれば親子の信頼関係を回復させるかかわりが必要になります。
親子のコミュニケーションを増やそうとするとき、ひとつ注意しなければならないことがあります。親から話しかける機会を多く持とうとすることは良いことですが、話しかけるついでに「学校はどうする?」「ちょっとは勉強しておいた方がいいんじゃない?」とついつい学校や勉強のことばかりしてしまうと、子どもは親との会話を避けるようになってしまいます。まずは子どもが好きなこと、親と一緒に楽しめること、過去や未来のことではなくて現在の生活のことを話題にして話ができるようになることを目指します。子どもも学校や勉強のことなどのしがらみのない会話であれば、話はしたいと思っていることがほとんどです。
不登校の状態から立ち直った子たちに当時の親とのエピソードを聞くと、「細かいことを言わずに見守ってくれた」「心配だったと思うが、自分の前では不安を見せないでいてくれた」と口をそろえて感謝を述べます。学校や勉強のことを直接的に言わずとも、親が心配しているということが伝われば、子どもの方から相談してくれるようになってきます。子どもが話しやすい関係性を心掛け、「いつでも力になるからね」「何かあったら言ってね」と親がいつも味方でいることを示すことが大切です。