ポイントその2 いまの子どもの気持ちを想像する

子どもがこれまで訴えてきたことを考えてみる

こうあるべきという先入観の枠をいったん外して、お子さんの訴えてきたことを中立的に考えられるようになると、「親が正しいのか、それとも子どもが正しいのか」平行線の対立から抜け出すことできるようになってきます。親の考えと子どもの考えはどこがどのように違っているのか、どうしてそのように考えるようになったのだろうかと、お子さんの心の中に起こっていることを想像してみることが、親子のお互いの理解を進める第一歩になります。
家族というのは関係の結びつきが強い分、何気ないやり取りの中で幸せを感じたり、些細な行き違いで深く傷ついたりすることもあります。信頼しているからこそ、全てを言わなくてもわかってほしい、汲み取ってほしいという思いがあるのでしょう。しかし、その思いがわかって当然だと押し付けるようになっていくと、そのつもりがなかったとしても家族の関係がこじれてきます。
お子さんは自分の気持ちを明確に言葉にして親にわかるように説明ができるだけ大人になっているわけではありません。親御さんも親の想いをわかって欲しいと切望していらっしゃると思いますが、まず親が譲ってお子さんの気持ちを想像するようにしていきます。
その中で、「もしかして、子どもの言っていたことはこういうことだったのかもしれない」と思い直すことが出てきたら、それを、お子さんにきちんと伝えることが大切です。「あなたの言っていたことはこういうことだったのかな?」「あの時わかってあげられなくてごめんね」と率直に伝えてみてください。
お子さんの反応が素っ気ないものだったとしても、失敗だったと思わないでください。まずは、親として子どもの気持ちを理解しようとしている、味方であろうとしている姿勢を見せることが一番大事なことです。
お子さんも、親は離れているときにも自分のことを思っていてくれているんだ、自分のために歩み寄ってくれているのだということは、はっきりとわかります。このようにかかわっていくことが、これからのお子さんの回復と成長に繋がる第一歩となります。

子どもが話してきたことを第一声で否定しない

親が理解を示そうとしているということが上手く伝わると、お子さんから話をしてくれるようになります。お子さんが親御さんに何か聞いて欲しい話があるとき、不平や不満を訴えることが多いと思います。例えば、学校のことについて「気の合う人がクラスにいない」「勉強がつまらない」とか否定的な言葉で語ることが多いでしょう。その時に、気持ちを前向きにしたいとか、不満ばかりを言う人間になって欲しくないという思いから、「そんなことないんじゃないの、自分から話しかけてみたら?」「つまらなくたってやる必要があるじゃない」と諭すことを優先してしまいがちです。
しかし、そのように対応してしまうと、お子さんとしては、不満に思っている気持ちをわかって欲しいと思っているからこそ話していたのに、否定されたと感じる結果になってしまうのです。不平や不満の言葉の裏には、「クラスの中に仲良くできる友達が欲しい」という欲求や、「勉強ができるようになったらな」という希望が隠れています。そういう前向きな気持ちを引き出し、次の行動することへ繋げていくということが必要なのです。
そのためには、子どもが何か訴えてきたときに、まず子どもの想いを受け止めてあげることが大切です。もちろん正しい方向に子どもを導くために、親がきちんと指導するということは大切ですが、何を言いたいか理解をする前に指導を行ってしまうと上手く行きません。まずは否定せずに、子どもなりの思いを受け止める、そのあとに指導を行うという順番があります。
お子さんも自分のことをよくわかってくれていると感じている時に、アドバイスされれば、素直に聞こうと思えるはずです。
まずは、お子さんが何か訴えてきたら、第一声で否定しないということを思い出してください。お子さんの気持ちとしては、ただ聴いてほしいのです。批判しないでほしい、アドバイスしないでほしい、本当は前向きになりたいけれど、そうなれない自分を許してほしい、という気持ちがあります。
お子さんから「どうすればいい?」と聞かれたときに、正しいアドバイスをしなければと思っている親御さんは少なくありません。しかし、お子さんは、正しい答えを求めているのではなくて、迷っている自分の気持ちを親御さんに確認することで、不安な気持ちを解消したいと思っているのです。学校の人間関係や学習でのつまずきについて、「こうすればいい」というはっきりとした答えというのはないはずです。誰でも、悩む中でも行動しながら次第に自分なりの答えを見つけていきます。どう答えてやれば良いかわからないときに無理に答えを作るより、「そういうことで悩んでいたんだね。こうすれば良いとは言えないけど、協力するから一緒に考えて行こう」と親も一緒に乗り越えようとしている姿勢を見せることの方が重要なのです。

子どもの感情を受け止める

ここまで述べてきたかかわりが上手くできるようになると、訴えたいことが受け入れられるようになるがゆえに、時にお子さんが激しい感情をぶつけてくるようになることがあります。これまで言えなくて苦しかったことや本当はしてほしかったことなど、親としても受け止めることが辛くなるようなことを訴えてくる場合もあります。
しかしこのときに、「何でも受け入れるからわがままになってしまった」「甘やかしすぎた」という理解をしてしまうと、せっかく形成されつつあった受容的なかかわりが崩れ、指導的なかかわりに戻ってしまうことがあります。
お子さんが怒りや悲しみを親にぶつけてくるときというのは、心の中に溜め込んでいた「マイナスの感情」を吐き出しているときであり、この感情をきちんと受け止めてもらえると、心の中が次第に整理されて行きます。マイナスの感情を溜め込み、心の中がマイナスの感情でいっぱいになっていると、見るもの聞くものが全て否定的に感じられ、肯定的な側面に気がつかなくなります。
この心の中のマイナスの感情は「誰に言っても理解されない」と思うからこそ、それに捉われ続けていきますが、「わかってくれた」「理解された」とお子さんが感じたときに解消されて行きます。そのようにマイナスの感情への執着から離れられるようになると、認知が次第に肯定的に変化してくるようになり、物事の肯定的な面にも目が向くようになってきます。
激しい感情をぶつけてくるときというのは、お子さんが心の深いレベルで変わろうとしているときですから、吐き出し、整理できた後には肯定的な認知へと変わるということを信じて、受け止め理解するというかかわりを続けて行く必要があります。

◎心の整理と確認行為

私たちの「心」というものの働きを「理性」と「感情」の大きく2つに分けて考えてみましょう。
「理性」にはわたしたちの思考や価値観、行動を決定づけている働きがあり、「感情」には、美しいものを見たときに胸を打たれる、許せないことがあったときにカッとなるなど、考えるのではなく、感じとる働きがあります。
この「理性」と「感情」が一致しているとき、わたしたちは大きな力を発揮しますが、本当はやりたくないけれどもやらざるを得ない状況にあるときには、あまりやる気も湧いてきません。一方では、自ら望んで決めたことでさえ、億劫になったり辛くなったりすることが起こるのが人間です。

「理性」と「感情」にズレが生じてしまった時、人生経験を積んだ大人なら「感情」の声を聞いて、上手くリフッレシュを取り入れてみたり、やり方や計画自体を再考してみるなどの工夫によって自分自身の立て直しを図ることができます。
しかし、「こうあるべき」という理性による抑圧が強いままだと、「感情」には不平や不満などのマイナスの感情が溜まっていき、いつしか心身の不調へと繋がっていくことがあるのです。

いまの子どもの気持ちを想像し、受容的なかかわりを行うことによって、「感情」を抑圧していた「理性」の“蓋”が開くようになります。そうすると、自分の心の中には「こうすべき」と思う一方で「したくない」と思う矛盾した感情があることを発見します。このときに、お子さんの混乱は激しくなっていくのです。(図2)

このときの混乱とは、自分の中に相反する思いが存在し、自分で自分が信じられなくなっている状態です。お子さんが不安を感じ、「これでいいのかな?」「どうしたらいい?」と今まで自分で判断できていたことまで親に確認を求めるようになることがありますが、これは、基本・基準となる感覚を自らに取り込んで安心したいという欲求なのです。
「甘えたい」という欲求と「親を拒絶したい」という欲求が同居し、混乱をしている子どもには、愛情をたびたび確認したり、ときに親を邪険に扱ったりすることがあります。このような状態も、心の中が混乱していることによって起きてきますから、愛情を求めてきたときには応じ、拒絶するようなときには距離を置いて考えさせるという対応が必要です。
この混乱は先にも述べたように、心の深いレベルで変化が起ころうとしているときに起こることですから、拒否せずに受け止めることが大切であり、上手く受け止められれば次第に安定していきます。
このときには特に母親への負担が集中するため、父親や家族、周囲の人が母親を助けるようにフォローしたり、カウンセラーに相談して負担を軽くしていくことが大切です。

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