不登校の症状の現われ方や、必要なかかわりの違いなどから、不登校のタイプは7つに分類することができます。

お子さんの言動や気になる特徴のそれぞれがバラバラなものに見えると、どう対応して良いかわからなくなってしまいますが、タイプとして理解ができれば、対応する親にも精神的なゆとりが生まれます。お子さんの気持ちを親が慌てずに受け止めることができれば、必要なかかわりを必要な時期にしてあげることで、不登校の長期化を未然に防ぐこともできます。

代表的な7つのタイプについて解説していきますので、『不登校の解決のための7つのポイント』と併せてお子さんへのかかわりや、これからの回復の見通しの参考にしていただければ幸いです。

不登校の7つのタイプとそれぞれのタイプの関連

それぞれのタイプには特徴や違いがありますが、別タイプとお互いに関連し合っているところがあります。

近くにあるタイプほど関連が深く、時間の経過と共に別のタイプへと変化することもあります。

しかし、それぞれのタイプにはネガティブな特徴ばかりでなく、生まれ持った強みも備えています。お子さんの特徴を知ることで、お子さんの力の本当の活かし方を見つけることこそが最終的な目的になります。

7つのタイプの分布

不登校のタイプには「不安タイプ」と「無気力タイプ」の大きな2つの傾向があり、かかわり方が全く違ってきます。また、学年(年齢)によっても現れやすいタイプがあったり、学年(年齢)が上がるにつれタイプが変化することもあるので、「不安と無気力の傾向」「学年(年齢)の高低」の2つの軸で考えると違いがわかりやすくなります。

一見すると甘えているように見えるために追い詰めてしまったり、無気力なのに刺激することを避けてしまったり、お子さんのタイプに合わない対応をしてしまうことがありますが、上手くいかない時はお子さんには本当はどういう対応が合っているのか、各タイプの違いを見て参考にしてみてください。

母子分離不安タイプ

親から離れることや学校生活に不安や恐怖を感じやすいタイプ

 

 

 

特徴と留意点

  • 親(母親)と離れて一人になることや、集団の中に入ることに強い不安や恐怖を感じ、行動できなくなる
  • 親(母親)の愛情を渇望しているが、それが叶えられない悲しみを抱いていたり、罪悪感からうまく表現できないでいる場合がある
  • 自分がうまくできないことで見捨てられることへの不安や、同世代の子たちの中で自信を持つことができないことから劣等感を抱いている場合がある
  • 母親がそばにいると情緒的に安定して、一緒に登校できることもあり、同級生の前で自信を持って振る舞うこともできる
  • 就学前には「登園しぶり」を経験している場合がほとんどで、小学校低学年に多いが、高学年の子にも増えてきている

親や周囲のサポート

  • 辛いときには守ってもらえる、苦しいときには助けてもらえるという安心感(基本的信頼)が損なわれている可能性があるため、親子の距離を縮めて安心させることを優先する
  • 甘えと見て独立心を育てようと引き離すと、却って不登校が長引く可能性があるため、母子密着・母子一体の時間を作るようにする
  • 心理的に安定したらそのまま見守らず、同世代の中で自信(自己有用感)が持てるように、年齢に応じたスキルを獲得させるようにサポートする

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 本来的には親を慕って頼りにしているタイプなので、子どもの良さを認めて、励ます関係になると親の期待に応えようとして力を発揮する

  • 感受性や共感性が高いので、動物の世話、芸術、ボランティアなど子どもの心のやさしさや繊細さを活かせることに巡り合うと自信をつける

  • この状態が改善しないまま思春期に入ると、「情緒混乱・内向タイプ」「情緒混乱・外向タイプ」に変化して、過剰適応を繰り返す恐れがある

情緒混乱・内向タイプ

気分の落込みや身体症状が起こり登校したくてもできなくなるタイプ

特徴と留意点

  • 学校に行こうとすると、頭痛や腹痛などの身体症状が起こり、登校したくてもできない状態に陥る
  • 学校を休むことに対して罪悪感が強く、不甲斐ない気持ちや、自分を責める気持ちを抱いている
  • 真面目で自分に厳しいため、少しくらいの成果では自分自身を認められなかったり、わずかなミスも許せないと思うような完璧思考の面がある
  • 勉強もスポーツも人並み以上にでき、そのことが本人の頑張りを支えてきたことでもあるので、不登校になったということを受け入れられずに苦しんでいる
  • 不登校になったきっかけや原因を話したがらない場合や、親を頼ろうとしないことがある

親や周囲のサポート

  • 助けを求めること自体を許せないことがあるため、本人が「期待されなくなった」と受け取らないように、挫折感や絶望感を認め、いつも味方でいることを伝え、助けを求めるのを待つ
  • 親が受け入れる姿勢を見せると、これまで親に対して抱いていた不平や不満をぶつけるようになる場合があるが、制止せずに一旦全て吐き出させるようにする
  • 心理的に安定してくると、将来についての不安や焦り生じてくるため、慰めるだけでなく、いろいろな選択肢があることを伝え、行動につなげていく

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • もともと集中力や思考力は高いタイプなので、パニックに陥らないように不安をコントロールする術を身につけて、自分のペースで学習を進められるようになれば結果が出やすい

  • 社交的でない側面があるが、無理をして周囲と同じように振る舞おうとせず、自分のできることや良さを認めていくと、人間関係が上手く行くようになる

  • 不安や焦りが人一倍強いタイプなので、子どもの気持ちを受け止めずに親主導のかかわりを続けると家庭内暴力などの問題を引き起こしたり、「神経症性障害を伴うタイプ」へと変化する恐れがある

情緒混乱・外向タイプ

一人で問題を抱え込みがちで過剰適応と気力の低下を繰り返すタイプ

特徴と留意点

  • 人間関係のトラブルや学習上の課題を一人で抱え込みがちで、解決できなくなると投げ出したり、気力を落として立ち止まってしまう
  • もともと意欲的で意志が強く、自分の思い通りにしたいという完璧思考がある
  • 気力が上昇しているときには過剰適応ぎみに頑張りすぎるところがあるが、抱えきれなくなると急にやめてしまうなど、0か100かの極端な行動を繰り返してしまいがちである
  • プライドが高いため自分の失敗として受け止めることができず、問題を隠したり、原因を外的要因に求めがちである

親や周囲のサポート

  • 問題を抱え込んで動けなくなっているときに、指示的な態度でかかわるなどすると心を閉ざしてコミュニケーションが取れなくなってしまうため、同じ目線に降りて、一緒に問題を解決していこうとしている姿勢を示す
  • 理想に近づこうとしても近づけないという本人の苦しみに理解を示し、信頼関係を築く
  • 一気に目標にたどり着きたいという焦りを諫めつつ、最終目標の途中のプロセスにいることを示し、励ましながら進めていく
  • うまくいかなくなった時も自暴自棄にさせないように、うまくいっていること、これから頑張る必要があることの両方をフィードバックして本人に力をつけていく

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 新しいことにチャレンジしてみようという意欲や行動力がある一方で、気力が長続きしないことがあるため、短期間(3ヶ月以内)で達成可能な目標を定めるようにする

  • 目の前の短期目標をいくつかクリアしていけば、最終的には大きな目標にたどり着くように、中長期の目標を意識するようにすると力をつける

  • もともと社交的でムードメーカー的なところがあるため、人と交流していくと刺激を受けて良い方向に進む

  • 行き詰まったまま時間が過ぎていくと次第にやる気をなくし、「無気力・回避タイプ」「無気力・長期化タイプ」に移行していく可能性がある

神経症性障害を伴うタイプ

情緒的混乱が激しく神経症性の症状を発症しているタイプ
 

 

特徴と留意点

  • 過大なストレスがかかったことにより、神経症性の症状が現れる
  • 代表的な症状は不潔恐怖(潔癖症)、醜形恐怖、解離性健忘(記憶障害)、摂食障害などがある
  • ストレスによってこれらの症状が一時的に起こるが、穏やかに過ごしていると症状が起こらない場合がある
  • 精神疾患の初期症状の可能性もあるため、思春期の症例に詳しい専門医を受診する

親や周囲のサポート

  • 神経症性の症状が現れたときには、登校刺激になるようなことは一切やめ、精神的な休息が取れるように環境を整える
  • できるだけ早く思春期の症例に詳しい専門のクリニックを受診したほうが安心だが、本人に病識がない場合は、通院を勧めること自体が気持ちを傷つけることになりかねないため、無理に病院に連れて行くことは避ける
  • 子どもにいつもと違うような様子があるため親は心や身体のことを心配しているということをきちんと伝え、納得させてから病院に行くようにする
  • 主治医の指示に従って治療を進めるが、克服するためには病気を治そうとする本人の意志が必要であるため、安定してきたら、少しずつ外出や運動、学習など同世代とのギャップを広げないための取り組みも取り入れていく必要がある

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 繊細でこだわりが強い性格を活かして、芸術や学習の分野で興味のあることに取り組み始めると、集中力を発揮し高いレベルで習得することができる

  • 他人とは違う感性を持っていても、周囲との関係を拒絶せずに、趣味や特技で繋がるようにしていくと人間関係が広がる

  • 「情緒混乱・内向タイプ」の一部が変化してこのタイプに移行する可能性がある

無気力・回避タイプ

ストレスに敏感で好きなことはできるが嫌なことは回避してしまうタイプ

特徴と留意点

  • ストレスに感じる場面から逃避したり、直面を回避したりする傾向がある
  • 自分の意志を示したり言語化することにためらいがあり、曖昧な言葉を使って断言を避けようとする
  • ストレスに対して過敏で、ストレスがかかると不安にかき乱されたり、身体症状が出ることがあるが、その場が過ぎると元気になってくる
  • 登校刺激をする人間は避けるが、コミュニケーションをとること自体は嫌いではない
  • ゲームをしたりネットを見たり、好きなことをして1日を過ごしているが、考えると気持ちが落ち込むので、できるだけ考えないようにして自分の心を守っているところがある

親や周囲のサポート

  • 登校刺激をすると一時的に緊張し、放っておくと無気力化するということを繰り返すため、信頼関係を保ちながら子どもの成長を長い目で見て伴走していく必要がある
  • 嫌なことを回避してしまう原因の一つに、人間関係や学習の上でのスキルの不足があるため、ひとつひとつできることから向き合わせながらスキルを向上させていく必要がある
  • ストレスへの向き合い方や対処能力を高めていくことも必要であるため、「どちらかといえば嫌」という程度の拒絶であれば、積極的にチャレンジさせストレス耐性を高めていく

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 人間関係の中であまり好き嫌いを言わないので、人に好かれやすく友達ができやすい
  • 人とかかわるようになると、活力が生まれ、学習等にも良い影響が出てくるので、学習よりも交流に力を入れると良い
  • 子どもの気分や要望を優先し続けていくと、自分の立場を合理化して「無気力・長期化タイプ」に移行する恐れがあるため、日常の中に変化のきっかけを作る必要がある

無気力・長期化タイプ

不登校が始まってから時間が経ち無気力な状態が続いているタイプ

特徴と留意点

  • 不登校になってからある程度の期間が経ち、学校に通わなければならないという義務感がほとんどなくなりかけている
  • 自分なりの解釈で学校に行かなくても良い理由を作って、現在の生活を続けることを肯定している
  • 現在の生活や将来については、多くを望んでおらず、現在の生活がそのまま続けばそれで満足しようとしている
  • 考えると不安になることを考えないようにしている心理や、欲求を持つと葛藤が起こり苦しむため、合理化することにより自分の心を守ろうとする心理がある

親や周囲のサポート

  • 見守る対応は3年を限度に、行動を起こす対応に切り替える

  • 不登校の始まりの時には、人間関係での傷つき、学習の上での挫折など苦しい経験があったことは事実だが、「辛い経験があったからこうなっても仕方がない」「今の生活をずっと続ける権利がある」というように考え方が変化してきた時には注意が必要である
  • もう取り戻すことができないという絶望感や将来に対する不安、そのような境遇になってしまったことへの怒りなどの感情に理解を示して、コミュニケーションを取り戻していく
  • 家庭内での接触がほとんど無くなったり、親子間で力関係が逆転するようになると、長期のひきこもり状態に移行する恐れがあるため、家族だけでは難しい場合は、第三者を入れて対話を続け、子どもの考えや感情を引き出していく

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 一度決めたら考えを変えない強さがあるので、打ち込めることが見つかると一つのことを深く学んでいく
  • 学んだことが自身の柱になるので、時間や年齢を気にせずじっくり学んでいくとよい
  • 不登校が始まった当初は違う状態像であり、時間の経過とともに無気化してこのタイプに移行した可能性が高く、
  • 他のいずれかのタイプが時間の経過とともにこの状態へと移行してきたと考えられるため、動き出すと他のタイプの特徴が現れてくることがある

発達障害・LDを伴うタイプ

不登校の原因のうち発達障害・LDが大きくかかわっているタイプ

特徴と留意点

  • 自閉症スペクトラム障害、AD/HD、LD等の診断を受けたことがあるか、発達障害の傾向や発達の偏りが目立ついわゆるグレーゾーンの子ども
  • できないことや作業が遅いことがあり、親や学校の人間関係から叱責を受けやすく自信を失くしている
  • 周囲の子と感じ方・考え方が異なり、共感できなかったり思ったことを口走ってしまったりすることが原因で人間関係のトラブルになったり孤立することがある

親や周囲のサポート

  • できないことや苦手な能力を責めずに、できること得意なことをまず伸ばそうとする
  • 人と較べて苦手なことは全てを発達障害のせいにせず、やり方を変えればできるということを示し続ける
  • 発達障害があるということについて本人が受け入れられない場合は、診断名に固執せず、自分の特性や個性を正しく理解できるようにサポートする
  • 親は子どもの言動について発達障害の特徴ということで解決しようとせず、子どもの気持ちの理解に努める

このタイプの強みと他のタイプとの関連

  • 持って生まれた特性を上手く活かせるようにやり方を工夫すれば、様々な職業につくことができるので、自信を失わせないようにすることが何より重要
  • 趣味などで学校以外の居場所を見つけると、大人顔負けの力を身に着けることがあるため、型にはめずにチャレンジをさせていくと意欲的になる
  • 他の全てのタイプと関連があり、他のタイプの特徴も合わせて持っていることが多い

各タイプのキーワード

それぞれのタイプにおいて、課題の中心になっていること、最優先で取り組むこと、そしてきちんと対応していけば何が生まれるのかということを短いキーワードでまとめていきます。

お子さんのタイプがわかってきたら、これからの対応がぶれないようにキーワードをいつも思い出してかかわってみてください。

それぞれのタイプについて「課題」×「対応」=「子どもの変化・スキルの向上」という形式でまとめています。

母子分離不安タイプ…不安 × 基本的信頼感 = 健全な心身
情緒混乱・内向タイプ…悲しみ・不安 × 共感 = 自己理解
情緒混乱・外向タイプ…焦り・不安 × 伴走 = 行動力
神経症性障害を伴うタイプ…心の不調 × 心のケア = オリジナリティ
無気力・回避タイプ…回避・逃避 × 経験 = スキルの向上
無気力・長期化タイプ…諦め・無気力 × 対話 = 再スタート
発達障害・LDを伴うタイプ…行き詰まり × 解決策 = 自分のやり方

 動画でもご覧いただけます!

YouTubeで「不登校の7つタイプ」の動画が全編視聴できます!

文・Allight Educational Consulting 代表 平栗 将裕

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