不登校を経験した中学生が高校受験で成功を攫むためのポイントをまとめます。
成功とは、少しでも偏差値が高い学校に進学することではありません。心理的状態、身体の調子、学力状態や成績、家庭の経済的な状況など、みんなそれぞれ条件は異なります。しかし、いま置かれている地点から、打てる手を尽くし、いま選べる最高の進路を攫むことができれば、それは成功と呼べるのではないかと思います。見栄えが良い進路より、自分で考えた進路に向かって挑戦するからこそ愛着が生まれ、いざその進路に進んだ時にも、この道を続けていこうという動機ができるからです。
高校受験という挑戦の中で成功を収めるためには、挑もうとしている「相手」や「自分自身」のことを良く知らなければなりません。
学年や今の状況に応じたポイントをご紹介したいと思います。
中学3年生の場合
現在中学3年生で高校受験を考えている場合、公立高校を含め行ける高校の選択肢は様々あります。(詳しくは過去記事『不登校からの高校選び−高校の制度の仕組みを知る−』をご参照ください。)
高校選びの重要なポイントは、現在の心身の状態から、少しだけ背伸びをするような良いステップアップになる環境を選ぶということです。現在週に何回か登校できているなら、学力と体力を身につけていき週5日登校の全日制を目指すこともできますし、ほとんど自宅から出られない状態なら、週に1回程度の通信制高校を選ぶのも、次の段階を目標にできているので良い目標設定だと思います。
重要なのは、いま現在の状態とマッチする高校を選ぶのではなく、高校入学までの時間をつかってどこまで回復できるかということを目標にして志望校を考えることが重要です。
つまり全く登校できていない状態を0、高校の週5日(場合によっては週6日)の登校を続ける状態を100とすると、「3ヶ月後には20〜30まで回復できているかな」「高校入学までには80〜90の状態は目指せるかな」と、プロセスを刻んで目標を立てていきます。
目安として、中学3年生の12月頃に学校やフリースクールに週の半分ぐらい登校できるという「50」くらいの状況なら、遅い時間から始まる定時制(多部制)高校や、1日の授業時間が短かったり、週の登校回数が少なかったりする通信制高校は無理なく登校できる可能性が高いと思われます。
しかし一方で、本人の意志が強く、どうしても全日制高校に通いたいと思っている場合は、12月頃には目標に達していなくても、その後の頑張り次第で大きく変化する可能性もあります。無理なく通える高校を選んで、大学から理想の進路を目指すという考え方も、多少無理をしたとしても憧れの高校に入るという考え方も、現在の状態を総合的に考えた上での選択であれば、どちらも良い選択だと思います。
公立高校を受験する場合は、都道府県によって多少制度が異なりますが、「自己申告書」「志願申告書」「自己PRカード」等の書類を提出することがあります。(これらの書類の書き方は動画『自己申告書の書き方』で解説しています!)これらは、中学校で欠席が多い理由や、高校に理解しておいて欲しいことを説明する書類ですが、これらを提出することによって、一般の志願者とは区別して選抜するという配慮があり、メリットにつながることもあります。
また私立高校でも、試験の結果に加えて面接も重視するため、面接官から欠席の多い理由や高校生活への意欲について聞かれることがあります。
書類でも、面接でも、中学校生活で学んだこと、これからの高校生活への期待や目標など、不登校の体験と向き合って考えなければならない内容になっており、本人とっては辛い作業になる場合があるため、準備には相応の時間が必要です。
こうしたことに準備が必要になるのは大変ではありますが、この過程の中で、過去の体験が少しずつ整理されて客観的に向き合えるようになったり、「今度こそ高校生活は頑張って続けていこう」というモチベーションが高まったりなど、良い効果がある面もあるため、チャンスと見て前向きに捉えていくことが大切です。
書類や面接の準備をする時期になって焦らないように、少しずつ高校生からの生活に近づけるように一歩一歩準備を進めていくことが必要です。
中学1〜2年生の場合
現在中学1〜2年生でいずれは学校に戻って、高校受験も考えていきたいという場合は、中学1〜2年生のうちにじっくり準備をして、少しずつ登校を開始し、中学3年生からは完全な登校を目指すという方法がおすすめです。
不登校が継続してしまい、出席がなく、成果物(提出物)を提出せず、定期試験も受験していないと、成績の参考にするものがなくなってしまうので、評定欄には「/(斜線)」が引かれ、調査書点(内申点)がほとんどつかないことになります。
しかし、成果物を自宅で作成して提出したり、定期試験を別室で受験できたりすると、成績の評価に繋がってきます。
高校入試選抜の際に評価される評定は、全学年分か第3学年のみか、都道府県により基準が異なりますが、通常、高校入学の直近の状況である第3学年の状況が特に重視されます。そのため、中学1〜2年生では無理のない範囲で自宅学習や慣らし登校をはじめて行って、中学3年生から本格的に通えるように準備すると不利になる点が少なくなります。
私立高校の受験では、合否の基準は各高校の独自のものになりますが、第3学年の状況を重視するという事は変わりません。中学3年生で完全に登校できていなくとも、状態が前向きに変化してきていることを伝えれば、好意的に受け取ってくれる高校は多いはずです。
在籍校には事情により戻れないという場合には、フリースクールや教育支援センターへの通学も在籍中学校の指導要録上の出席扱いにすることができるため、このような施設を利用することも有効です。
出席日数になるということも重要ですが、最も大切なのは、中学生のうちに人間関係の経験値をできるだけ多く積むことです。場所によって施設の環境はざまざまであるため、馴染みにくいと感じる場合は無理をする必要はありませんが、自分に合った環境が見つかるまで、学校以外に所属できる場所を探し続ける事は必要だと思います。
人間関係に自信をなくしていたり、いじめられた経験をもっていたりする子は、高校での人間関係にも少なからぬ不安を抱いています。中学校生活のうちに新しい人間関係を築く経験や、共感し会える友人関係を経験できると、ポジティブな経験が上書きされ、対人関係に自信が持てるようになります。
人間関係の傷を癒すのはやはり新しい人間関係であり、傷つかないように上手く人と付き合う方法も人間関係の中でしか学ぶことができません。同世代の子でなくとも、話しやすい人と1対1の関係からでも、少しずつかかわることのできる人を増やしていくことが重要です。
文・Allight Education 代表 平栗 将裕