高校を選びの最も重要なポイントは、お子さん本人が行きたいと思える高校を選ぶことです。どんな高校があっているのかを知るためには制度を理解し、実際に足を運んでみて、高校の雰囲気を肌で感じてみることが大切です。そうした経験によって、少しずつ心が高校生へと変化していきます。大切なポイントをまとめていますので、参考にしていただければ幸いです。
高校入試のしくみ
公立高校
不登校になると公立高校への進学が難しいようにいわれますが、決してあきらめる必要はありません。
公立高校の高校入試は、「学力検査点」「調査書点」「面接・作文・実技等のその他の項目の点数」からなる「総合成績」によって選考を行い、成績の良い順から合格を出します。不登校になると中学校の成績がつかなくなるため、「調査書点」の部分は確かに不利になることがあります。
しかし、また欠席の多い理由や高校に理解してほしい事柄を伝えるための「自己申告書((自己申告書の書き方はこちら動画をご参考ください))」という書類があり、これを提出することによって他の受験者とは区別して選考を行う「特別選抜」を実施している都道府県もあります。そのほかに当日の学力検査(入学試験)の得点を合格最低ラインよりも高めること、面接・作文や実技を課す高校では、それらの得点を高めることで「調査書点」が削られる部分をカバーして合格の可能性を高めることができます。
都道府県によって、「総合成績」を算出するための各項目の配点比率や「調査書」にどの学年の分までの成績が反映されるかなど、違いがあるため、自身の地域の入試の仕組みをしっかり調べておけば、無理だと思っていたところにチャンスが見いだせるかもしれません。
特色ある公立高校
公立高校の中には、不登校を経験した生徒を積極的に受け入れている高校もあります。主要3教科で受験できる高校や、面接・作文のみで受験できる高校もあります。こうした高校は「定時制」「単位制」の高校に多くあります。
その他にも、専門学科や総合学科を備えており、実技試験の得点の比重が非常に大きい高校もありますので、美術、音楽等に興味のある生徒にとってはチャンスが広がります。
私立高校
一方、私立高校の選考は、高校ごとに様々になります。「あくまでも参考程度」として当日の試験重視の高校も、「10日以上休んでいると難しい」と率直に言われる高校も、「以前も不登校を経験した生徒が合格していますよ」と肯定的な反応の高校もあります。
学校説明会等に参加して、受け入れの状況を確認しながら志望校を考えていくとよいでしょう。また私立高校では、筆記試験の他に面接を課し、それを重視するところが数多くあります。入学後にきちんと登校できるか、同級生とうまくなじめるかという点をみる高校が多いようです。
高校の制度の違いを知る
高校を選ぶためには、その制度や違いについて理解しておくことが大切です。最近はいろいろなタイプの高校がありますが、全日制、通信制など、様々な通学スタイルの高校の中からどの高校を選ぶかは、中学3年生の12月頃にどのくらい登校(外出)ができる状態になっているか、ということが一つの目安になります。
どうしても行きたい高校がある場合、学力、生活習慣、人間関係力を含め、高校に通っていけるだけの準備を着実に進めているなら、多少背伸びして行きたい高校を狙いに行っても良いと思います。
自分に合っている高校はどんな高校か、しっかり比較検討していくことで、高校生活のイメージを作ることができ、入学後のギャップを少なくすることができます。
まずは「学年制」VS「単位制」、「全日制」VS「定時制」、「通学制」VS「通信制」の3つの観点があることを大まかに捉えておきましょう。
「学年制」と「単位制」の違い
学年制と単位制は、単位認定についての考え方が異なります。「学年制」の高校では、1年ごとに進級認定がありますので、ある教科の単位を一つでも落としてしまったら、進級ができず、留年となります。一方「単位制」の高校では、学年による区分がなく、もしある教科の単位を落としてしまっても、留年することはなく、取れなかった単位だけを来年度履修することができます。
「学年制」でも「単位制」でも共通しているのは、単位認定のためには出席が必要であり、卒業単位に達しなければ卒業はできないということです。中学校とは違い、通わなければ卒業できないため、高校に通えるだけの学力・体力共に整えていくことが大切です。
全日制と定時制の違い
「全日制」とは朝から夕方までの昼間に開校している高校です。「定時制」というとこれまでは夜間高校のイメージがありましたが、現在は定時3部制、4部制など、登校の開始時間が細かく分かれている多部制の学校が増えました。登校の開始時間が遅い2部の倍率が高かったり、部によって違う学校のように雰囲気が変わったりすることがありますので、定時制については「部」ごとの特色を調べておくことが大切です。
「通学制」と「通信制」の違い
「通学制」と「通信制」の大きな違いは登校日数にあります。普通の高校では、週に5日または6日登校する必要があります。通信制高校とは、通信教育で高等学校の教育課程を履修する高校であり、月1~2回、もしくは年間5日程度の「スクーリング」で卒業することができます。
通信制高校の本校とは別に、普段通学する場所として「サポート校」や「キャンパス」を併設しているところが多く、高校によって登校すべき日数は週1~5日と様々です。登校日数を少なくできるという点がメリットでもありますので、やみくもに週5日登校する環境を選ぶのではなく、自分に合った環境を選ぶことが大切です。
学校のことを知る機会のいろいろ
これまで様々な高校の違いを見てきましたが、自分に合った高校を選ぶためには、実際に足を運んでみることが大切です。学校のことを知るイベントは学校説明会だけに限らず、様々な機会があります。ひとつひとつ解説していきますので、見学の際の参考になさってください。
授業公開
主に公立高校の行事で、入学を希望している人だけでなく、保護者や中学校の先生、地域の人たちにも学校を知ってもらう目的で、学校で行われている授業が公開されます。学校によって開催時期、予約の有無など違いがありますので、学校のHPで詳細を確認してみましょう。
学校説明会・学校見学会
入学を希望する生徒と保護者向けに学校や入試の制度についての説明が行われるのが学校説明会です。説明会よりもカジュアルな形式で、在校生の発表や校舎の案内などが行われるのが学校見学会です。通常学校説明会より前に、学校見学会が始まります。
体験入学
入学を希望する中学3年生や中学2年生向けに行われ、高校で行われているカリキュラムをアレンジした授業を体験することができます。実技系の学校に多く、人気校では抽選になることもあるので、早めにチェックしておきましょう。
合同説明会
数十の学校が集まり、各校が個別のブースで学校の説明や相談を行うイベントです。公立だけが集まるもの、私立だけが集まるもの、公立と私立が一緒になって行うものなど形態は様々です。
個別相談
ほとんどの学校では個別に相談の機会を設けています。学校説明会のタイミングを逃してしまっても、直接問い合わせてアポイントを取れば、学校の先生に相談したり、校舎を案内してもらうことができます。特に入学を希望する学校の場合は個別相談を受けた方が良いでしょう。
一般公開(体育祭・文化祭)
体育祭や文化祭も学校の雰囲気を知るいい機会です。ほとんどの場合予約も要らず、誰でも見学することができます。
高校生になる過程を大切に
現在では不登校からでも進学できる高校がたくさんあります。入りやすい高校が増え、次の進路が繋がることにより多くの生徒が救われることになりました。
しかし一方で、高校選びが十分でなく、ミスマッチにより通えなくなってしまったというご相談も少なくありません。
入学するのが簡単なところや、親が行かせたいところに決めてしまうのではなく、本人がここで頑張っていきたいと思える環境を整えてやることが何より大切です。
高校は本人が通っていくものですから、最終的な選択は本人が決断させる必要があり、決断するために比較検討をしながら考えたこと経験は、高校への通学を続けるモチベーションにもなるのです。
ここに記した進路の情報を与えながら、学校を見学し、比較検討させ、志望校を決め、それに向かって受験勉強をするという経験を通して、心がだんだん高校生になっていきます。高校に入学するから高校生になるのではなく、自分の進路を探し、それに向かって努力するから高校生に変われるのだと私たちは考えています。
ご家庭で高校のことを少しずつ話題にしたり、家族で合同説明会に参加してみたり、なんでもできることから少しずつ行動に移すことで、本人の考え方が成長してきます。
「学校って楽しい!」と思える高校生活を目指して、一歩一歩歩んでいきましょう!
文・Allight Education 代表 平栗 将裕
“不登校からの高校選び −高校の制度の仕組みを知る–” に対して2件のコメントがあります。
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